「語順と情報構造の関係」を完全攻略
大学入試で必須となる旧情報→新情報の流れ・There構文・外置構文・強調構文・倒置を徹底解説
まず全体のルールと全体像
英語の語順は、文法的な正しさだけでなく「どの情報を、どの順番で伝えるか」という情報構造(information structure)によっても決まります。英文が読みにくく感じたり、和文英訳・自由英作文で不自然な語順を書いてしまったりする原因の多くは、この情報の流れのルールを知らないことにあります。大学入試の下線部訳・語順整序・英作文で頻出する構文は、実はすべてこの原則から生まれています。
1) 情報構造の基本原理:旧情報→新情報・末尾焦点・末尾重心
英語の文章では、原則としてすでに述べられた情報(旧情報・given information)を文の前寄りに、初めて述べられる情報(新情報・new information)を文の後ろ寄りに置きます。これを旧情報→新情報の原則と呼びます。また、伝達価値の高い新しい情報は文末近くに置かれやすいという性質を末尾焦点の原則(end-focus principle)、長く重い要素ほど文末に移動しやすいという性質を末尾重心の原則(end-weight principle)と呼びます。長文読解の内容一致問題や、文と文のつながり(連結性・cohesion)を問う問題では、この原則の理解が正解の決め手になります。
・1文目で初めて登場する a new book は不定冠詞 a のついた「新情報」であり、文末近くに置かれている。
・2文目では、その本はすでに読み手の知っている情報になったため、定冠詞をつけた The book として文頭(主語=主題)に置かれる。
・そして2文目の新情報である「有名な小説家が書いた」という部分が、今度は文末に置かれる。
・このように、前の文の新情報が、次の文では旧情報として主語(主題)になるという流れが、英文の自然な連結性(cohesion)を生む。
・本来 give A to B(AをBに与える)の語順どおりなら I gave the book that I had bought the day before to my sister. となるはずだが、目的語(the book…)が関係詞節を伴って非常に長く「重い」ため、短い to my sister を先に出し、重い要素を文末に移動させている。
・このように、長い名詞句(重い要素)を後ろに回す現象を重名詞句転移(heavy NP shift)と呼び、末尾重心の原則の代表例として和訳・語順整序で問われる。
2) There構文(存在文):新情報を導入する語順
英語では、不特定・不定の新しい情報を文頭の主語に置くことを避ける傾向があります。そのため、何かの存在・出現を新しく述べるときには、there を形式上の主語として文頭に置き、本来の主語(不定名詞=新情報)を動詞の後ろに回すThere構文(存在文)を用います。
・不定冠詞のついた a cat(新情報)をいきなり文頭主語にした A cat is under the table. は、情報構造上は不自然に響く。
・There を形式的な主語として文頭に置き、真主語(notional subject)である a cat を be動詞の後ろに置くことで、新情報を自然な位置(文末寄り)に配置できる。
・There構文の be動詞は、後ろに続く真主語の数(単数・複数)に一致させる:There are some cats under the table.
3) 外置構文(It … that / It … to):重い主語を後回しにする語順
that節や to不定詞句のように長く重い主語は、末尾重心の原則により文頭を避け、文末に移動させたうえで、空いた主語の位置に形式主語(dummy subject)の it を置きます。これを外置構文(extraposition)と呼びます。
・本来の主語は that we should keep our promise という重いthat節。これをそのまま文頭に置いた That we should keep our promise is important. は文法的には正しいが、非常に不自然。
・重いthat節を文末に外置し、空いた主語位置に形式主語 It を置くことで、自然で読みやすい語順になる。
・重要構文とセットで頻出する形容詞・表現:It is necessary that ~、It is likely that ~、It is no wonder that ~、It seems that ~、It is said that ~
・本来の主語である to不定詞句 to learn a foreign language well を文末に外置し、形式主語 It を文頭に置いている。
・和訳問題では、この it を「それ」と訳さず、後ろの to不定詞句(またはthat節)の内容を主語として訳し直すことが必須。
・目的語が長い場合の外置(形式目的語 it)も頻出:I found it difficult to solve the problem.(その問題を解くのは難しいと分かった)
4) 強調構文(Cleft sentence):It is ~ that … で焦点を作る語順
文中の特定の要素(主語・目的語・副詞句など)を強く際立たせ、新情報として際立てたいときに使われるのが強調構文(cleft sentence)です。It is ~ that … という形で、強調したい要素を it is と that の間に挟みます。
・形式主語構文の it と強調構文の it を見分けるには、「It is ~ that」を取り除いても文が完全な形で成立するかどうかを確認する。
・この例文は it is と that を取り除くと Tom broke the window yesterday. という完全な文が残るため、強調構文だと判断できる。
・強調できる要素は主語・目的語・副詞(句)であり、動詞そのものは強調構文で強調できない。
・目的語を強調する例:It was the window that Tom broke yesterday.(トムが昨日割ったのはその窓だった)
・人を強調する場合、that の代わりに who を使うこともできる:It was Tom who broke the window.
・What 節を主語(主題)として文頭に置き、be動詞の後ろに新情報(焦点)を置く構文を疑似分裂文(pseudo-cleft sentence)と呼ぶ。
・「It is ~ that」構文と同じく、後半の要素(この文では your help)に情報の焦点が置かれる。
5) 倒置(Inversion):特定の語句を文頭に出すことで生じる語順の変化
否定的な意味を持つ副詞(句)や場所・方向を表す副詞(句)などを強調のために文頭に出すと、その直後で主語と(助)動詞の語順が入れ替わる倒置(inversion)が起こります。大学入試の語順整序・文法四択・英作文で最頻出の項目です。
① 否定・制限を表す副詞(句)による倒置
・否定・制限の意味を持つ副詞(句)を強調のために文頭に置くと、その後ろは疑問文と同じ(助)動詞+主語の語順(倒置)になる。
・元の文は I have never seen such a beautiful sunset. であり、have と I の順序が入れ替わっている。
大学入試必須の倒置トリガー一覧:
・never(一度も〜ない) ・rarely / seldom(めったに〜ない) ・little(ほとんど〜ない)
・hardly … when / scarcely … before(〜するとすぐに) ・no sooner … than(〜するとすぐに)
・not until(〜して初めて) ・only after / only when / only by(〜して初めて/〜することによって初めて)
・not only(〜だけでなく) ・on no account / under no circumstances(どんな事情があっても〜ない) ・in no way(決して〜ない)
・Not until she read the letter という副詞節を文頭に出したことにより、主節は did she realize という倒置形になる。
・「A until B」=「Bして初めてA」という基本の意味を踏まえたうえで、倒置後の語順を正確に組み立てられるかが入試の得点ポイントになる。
② so / neither・nor による倒置(同意・共通性を表す倒置)
・肯定文を受けて「〜も同様だ」と言うときは so +(助)動詞+主語。
・否定文を受けて「〜も同様に〜ない」と言うときは neither / nor +(助)動詞+主語。
・(助)動詞は前の文の時制・種類に一致させる(一般動詞→do/does/did、be動詞→be動詞、助動詞→同じ助動詞)。
③ 場所・方向を表す副詞(句)による倒置(完全倒置)
・場所・方向を表す副詞(句)を文頭に置くと、主語と動詞がそのまま入れ替わる完全倒置が起こる(doやdoesを補わない点が①の倒置と異なる)。
・この倒置は主語が代名詞ではなく名詞のときに起こりやすい。主語が代名詞の場合は倒置しない:Here he comes.(○) Here comes he.(×)
④ 仮定法における if 省略の倒置
・仮定法の if節で if を省略すると、節内の(助)動詞と主語が倒置する。
・Were I ~(= If I were ~、仮定法過去)、Had I known ~(= If I had known ~、仮定法過去完了)、Should you need ~(= If you should need ~、未来のことに対する仮定)の3パターンが入試最重要。
⑤ 譲歩を表す as / though の倒置
・形容詞・副詞・無冠詞名詞・動詞の原形を as(または though)の前に出し、「〜ではあるが」という譲歩の意味を作る。
・Young as he was = Though he was young(彼は若かったが)と同じ意味。
・動詞の原形を用いる Try as he might(どんなに努力しても)のパターンも下線部訳で頻出。
6) 受動態と情報構造:主題を保つための語順選択
受動態(passive voice)は「〜される」という意味を表すだけの文法事項ではありません。すでに話題になっている情報(旧情報)を主語の位置に保ち続け、新しい情報を文末に置くという情報構造上の役割も担っています。
・話題の中心である「橋(it)」を2文目でも主語(主題)の位置に保つため、能動態 A young engineer who later became famous designed it.(長い主語が先頭に来て読みにくい)ではなく、受動態 It was designed by ~ を用いている。
・受動態を使うことで、新情報である「設計者」の情報を文末(末尾焦点の位置)に自然に置くことができる。
・行為者(動作主)が不明・不要なときに受動態が好まれるのも、同じ情報構造上の理由による:English is spoken in many countries.
7) 前置(Fronting):目的語・補語を文頭に出す語順
通常は動詞の後ろに置かれる目的語や補語を、対比・強調のためにあえて文頭に置く語順操作を前置(fronting)と呼びます。前に出された要素が文の話題(主題)となり、それに対するコメントが後ろに続きます。
・本来 I have never made such a mistake before. の目的語である such a mistake を、対比・強調のために文頭に前置している。
・目的語や補語が前置された文では、それに続く主節部分がさらに否定語句の前置と重なって倒置を伴うこともある(例文8・9を参照)。
・前置は、直前の文脈で話題になったものを引き継いで文頭に置くことで、文と文の連結性(cohesion)を高める働きも持つ。
文法まとめ表
情報構造をコントロールするための代表的な語順操作を、目的と構造で比較整理しました。
| 構文 | 目的・働き | 基本構造 |
|---|---|---|
|
There構文
|
不特定の新情報を自然な位置(文末寄り)で導入する |
There + be + 真主語
|
|
外置構文
|
重い主語(that節・to不定詞)を文末に回す |
It + be/V + … + that/to ~
|
|
強調構文
|
特定の要素を新情報として際立たせる |
It is ~ that …
|
|
倒置
|
否定語・場所の副詞などを強調のため文頭に置く |
副詞(句) + V + S
|
|
受動態
|
既知の主題を主語に保ち、新情報を文末に置く |
S + be + 過去分詞 + by ~
|
|
前置
|
目的語・補語を話題として文頭に出す |
目的語・補語 + S + V
|
語彙リスト(出現順)
本記事に登場した重要英単語・表現です。タップして音読練習に役立ててください。
| 番号 | 英語 | 日本語訳 |
|---|---|---|
| 01 |
information structure
|
情報構造 |
| 02 |
given information
|
旧情報 |
| 03 |
new information
|
新情報 |
| 04 |
end-focus principle
|
末尾焦点の原則 |
| 05 |
end-weight principle
|
末尾重心の原則 |
| 06 |
topic
|
主題 |
| 07 |
focus
|
焦点 |
| 08 |
existential there
|
存在文のthere |
| 09 |
extraposition
|
外置構文 |
| 10 |
dummy subject
|
形式主語 |
| 11 |
cleft sentence
|
強調構文(分裂文) |
| 12 |
pseudo-cleft sentence
|
疑似分裂文 |
| 13 |
inversion
|
倒置 |
| 14 |
heavy NP shift
|
重名詞句転移 |
| 15 |
cohesion
|
(文と文の)連結性 |
| 16 |
fronting
|
前置 |
| 17 |
passive voice
|
受動態 |
最後の確認
この原則を実現するために、英語には There構文(新情報の自然な導入)、外置構文(重い主語の後置)、強調構文(特定要素の焦点化)、倒置(否定語・場所の副詞の強調)、受動態(主題の継続)、前置(話題の文頭化)という6つの語順操作が用意されています。
下線部訳・語順整序・自由英作文のいずれにおいても、「なぜこの語順になっているのか」を情報構造の視点から説明できるようにしておくことが、大学入試突破の鍵になります。

